真夏の空席

LYRICS

眩しさに 引き寄せられて
ふりかえる 遠い夏のコール
「成績なんて忘れて今日は抜け出そうか。
内緒に…そう、ふたりで」

憂鬱の鍵解くような 君のたくらみと高鳴り
教室を抜け出し 逃飛行ね 警笛横切る
この街の特等席 次のチャンスは何時? 急ごう
海へ抜ける快速の感情―― 走った

喝采の雲に広がる夢
青空を背に 君の瞳に憧れる藍を見た
辿り着いたら確かめたいけど
このまま 揺れ重ねる想いを みつけないで

今はまだ…

詰め込んだミルキーウェイ
燥ぎまわった今日の星が続く明日を いつまでも疑わなかった

暮れていく 窓から遠く
移る街 時の観覧車
さよならも言えなかったこと
過ぎた針を戻せたら 放せる

僕らの未来航路 定める試験は無情にも
なぜ君を映す心 置き去りにしたのだろう
季節を恋える 今も ひとつだけ空いていて
言ったじゃない
「次の夏にも…」
ずるいよ

潮騒の風が悩める髪 絡める度に
忘れてきた思いが連れて行く  
帰路に渡された手の感覚 ポケットの底にまだ残ってる

今もまだ

幼い胸に秘めた 宿題のリボン
君に ほどいて欲しかった

駆けぬけた夏の日から

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Off Vocal Instrumental ※準備中

ABOUT

とある少女の、愛おしい後悔を描いた楽曲。
彼女は大人になり、幸せな毎日を過ごしているけれど、この季節になると、あの時言えなかった言葉を思い出してしまうのです。

RELATED CHARACTER – 登場人物

神谷 朱鷺子 / Kamiya Tokiko
163cm 45kg 3月23日生(17歳)

鳥居坂女学院3年、日本画家を目指す受験生。屈託ない笑顔の似合う少女。教室ではいつも友達に囲まれ淑やかに振る舞っているが、実際はお転婆でエキセントリックな性格。
​​円満な家庭に育つが、経済的事情により国公立への進学を約束したため、芸術大学の他に一般の大学を併願、日々勉強に明け暮れている。予備校の掛け持ちをしたいが、学費が足りないので年齢を偽って表参道のプールバーでアルバイトをしている。

​​​親しみやすい性格や清楚な外見もあり、バイト先では体目当てに誘われることも多い。けれど彼女は何よりも描いた絵こそが自身であるという気持ちが強く、そういう輩をうまくあしらっていた。しかしある深夜の帰り道、朱鷺子はいつものように声をかけてきた男に強引に車内に連れ込まれそうになる。

​​​​​​その窮地を間一髪で助けたのは、とある少年だった。

​​​​​​話を聞くと、この辺りで最近同様の事例が多発しているらしい。彼は訳あって「探偵事務所の手伝い」をしており、調査と情報収集のため、この周辺を訪れていたようだった。正義感の強い朱鷺子は協力したいと申し出るも、少年には「危険なことに巻き込めない」と断られてしまう。しかし、朱鷺子の機転により一方的に伝えた情報で、事件は落着に向かうことになる。
​少年に、お礼に「何かひとつ望みを聞く」と言われた朱鷺子は、学費のために親に内緒で働いていることを話す。それなら家庭教師代わりに、と彼に勉強を教えてもらえることになった。

それからふたりは放課後、「勉強会」のためにカフェや図書館で度々会うようになる。少年は探偵の事情か、頑なに本名を明かさなかったので、朱鷺子は「兄さま」と勝手に呼んでいた。学内ではそこそこ好成績な朱鷺子だったが、試験でもう一歩成果が出せず苦戦していた。けれど彼の手ほどきにより、めきめきと実力をつけていく。その間も朱鷺子は常に絵のことが頭にあり、教科書に落書きばかりするので絶えず少年を困らせていた。少年に会うたびに成績が伸びることや、本当の兄妹の様に自分を出せる勉強会は楽しくて仕方なかったが、絵にかける時間が減ってしまうことに不安もあった。

​​そして迎えた夏。受験において最も大事な季節。朱鷺子は美大模試の予想外の低評価に大きな焦りを覚える。勉強に傾倒しすぎて、実技の練習が疎かになっていた?少年にどう話せばいいのだろうと戸惑い、そのことを隠す朱鷺子。彼女は淡々と結果を出す少年と自分を比べ、上手く両立できないことに自己嫌悪し、ついには思うように絵が描けなくなってしまった。更には勉強会での会話も、自分を否定されているように聞こえて……彼女は重圧や劣等感から彼に当たり、その場を飛び出してしまう。

​絵が描けなくなって、彼と会わなくなって、どれくらいの時間が経っただろう。いくつもの気持ちが混じり合い、何ひとつ集中できない憂鬱な授業の中。
彼女に前触れもなく連絡が入る――
​​
それは、この夏一番の陽射しが降り注ぐ日のことだった。

東篠 航一郎 / Higashino Kouichirou
179cm 65kg 6月30日生(18歳)

都内髄一の進学校・西麻布学園の生徒。物静かで、年齢のわりに大人びた少年。実の両親を知らず、演奏家の養親のもと各国を転々として育つ。ヴァイオリンが好きで、いつも持ち歩いている。

​​​​突き抜けて要領が良く、課題やノルマも瞬く間にこなしてしまうため、常に時間を持て余し気味。
編入前は海外の大学で宇宙工学を専攻していたが、ある事情により自主退学、それを心配した養父の元に呼び寄せられ来日した。学内では日本語が話せないふりをして、日々をやり過ごしている。
​​​​
航一郎には、幼い頃から周囲に難題を探しては解決する癖がある。悩める人に手を差し伸べ、未知なる宇宙に耽溺し、答えのない音楽の世界に傾倒し、いまは探偵の手伝いに没頭していた。それは不器用な彼が他人とコミュニケーションを取れる唯一の方法だった。

​​​​​そんなある日、航一郎は任された調査の中で朱鷺子と出会う。彼女のアシストもあって事件は落着、その協力のお礼として、勉強を教えることになった。

​​​跳ね返りな朱鷺子の成績を上げることは航一郎にとってなかなか手ごたえのある”難題”で、初めはゲームのような感覚で接していた。しかし休憩時間に見た、朱鷺子が趣味で描いた絵の、自分にはない感性と情熱に揺さぶられ、いつからか純粋に彼女の夢を手助けしたいと思うようになる。

​​航一郎は昔から、優しい養親に負担をかけたくない思いがあり、何かとひとり背伸びをするところがあった。それが無意識に自分を犠牲にし、人の思いを優先する生き方に繋がっていた。​​けれど、愚直に自分の意思を貫く朱鷺子の姿に触れて、自分の意思とは、自分にしかできないこととは何だろうと考えるようになっていく。

​そんな矢先、朱鷺子が勉強会に顔を出さなくなった。度々バイト先を訪ねるも彼女はおらず、すれ違う日々が続く。原因はわかっていた。自分は目標達成を優先し、彼女の心を置き去りにしてしまった。きっとそれが彼女を追い詰めて……

​思い返せば、勉強のことばかりで、自分は彼女に何を残せたのだろう。自分のことも、本当の気持ちも。何も話せていない。

​けれどどんなに考えても、言葉にならなかった
​ただ頭に浮かぶのは、自分が一番焦がれた景色――

”君の描く世界の続きがみたい”

​​その思いを伝えるため、少年は彼女を夏の空へと連れ出した。

CREATORS – 著作者

Music: Treow
Lyrics & Story: 時透
Lyrical assistance: NaturaLe

Vocals: HALUNA

Illustration(Character): フ子
Illustration(Direction, Background): 時透

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